白内障術後に黄斑浮腫が起こることがあります。その危険因子を調べた論文があります。
論文
白内障術後黄斑浮腫の危険因子と発症率 、81984眼のデータベース研究
Risk factors and incidence of macular edema after cataract surgery: A database study of 81984 eyes
Ophthalmology 2016, 123: 316-323.
イギリスの先生が発表した論文です。
白内障術後の眼内レンズ挿入眼に生じる黄斑浮腫の発症率とその危険因子を調べています。
対象
イギリス国内の8施設で2010年12月~2014年12月の期間に白内障手術を受けた計81984眼を対象としました。
方法
白内障手術がされた症例について、視力、白内障以外の眼疾患、同時にした手術、術中合併症、糖尿病の程度、糖尿病性網膜症の程度を調べ、術後3ヶ月以内の黄斑浮腫の発生率を検討しました。
なお、黄斑浮腫を減らす効果のある非ステロイド性抗炎症薬が予防投与されている症例は除外されています。
結果
危険因子がない場合の黄斑浮腫発症率は1.17%でした。黄斑浮腫を発症するのは男性と高齢者が有意に多かったです。
疾患によって黄斑浮腫の発生率が何倍上がるか調べると
- 破嚢は2.61倍
- 黄斑上膜の既往は5.60倍
- ぶどう膜炎は2.88倍
- 網膜静脈閉塞症は4.47倍
- 網膜剥離術後は3.93倍
でした。
強度近視、加齢黄斑変性、プロスタグランジン点眼薬使用では、黄斑浮腫発生率に影響はありませんでした。
糖尿病患者では黄斑浮腫の発生率が高く、網膜症が重症化すると黄斑浮腫の発生率も上昇します。
- 糖尿病性網膜症がない場合は1.80倍
- 糖尿病網膜症がある場合は6.23倍
- 増殖性糖尿病性網膜症では10.34倍
まとめ
白内障術後の黄斑浮腫は、危険因子がなくても発症することがわかりました。危険因子がある場合はなおさらで、予防的治療が必要だと思います。予防的な治療として非ステロイド性抗炎症薬の点眼が一般的です。